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竜の眠る地

DQ主達の記録

Lv.7:二フラムを覚えた。



 棘の鞭(320G)と余ったお金で稽古着(80G)を買い、良い加減、洗っても臭い旅人の服は売る。店員に渋い顔されたが気にしない。よし、これで準備万端だ。

 丁度二フラムという呪文も覚えた。試しに唱えるも魔物を一定の確率で消し去るだけで、倒したって気もしないし、失敗する確率も高いので、イマイチと評価。魔力を無駄に消費するだけだと見切りをつける。

「さて、登るか」
 遠くに見えるナジミの塔を見つめて呟く。直ぐ横で『待ってました』と飛び跳ねるアキド。これは塔中のお宝をとり尽くさないと帰ってこれないだろうなと思い。薬草足りるかなと不安に思う。

 実際、塔に登って見たら、何てことない単純構造で行き止まりも多いが、迷うほど複雑じゃないし、ご丁寧に泊まれる場所まである。ここがちゃんと管理されている、初心者の腕試しに打って付けの塔である事がわかった。
モンスターも最初に出て来た【じんめんちょう】や【フロッガー】が主流であり、武器強化済みである今、ゼトの魔法に頼ることなく、階数を重ねる事ができるようになった。強くなったなと永遠と【スライム】相手に繰り返した修行は無駄ではなかったと噛み締める。
三階ぐらいだろうか。急に緑色のどろっとした物体【バブルスライム】が現れた。まさか此奴がいるとは思わなくて、毒消し草を購入していない。厄介なことにモンスターの構成している液体に毒が含まれているので、飛び散ると厄介である。幸い今回は誰も毒に掛かることなく【バブルスライム】はゼトのギラにより消滅した。いやー。近づかなくて良いのは良いな。
後は、やや強敵の灰色のローブを纏った人型モンスター【まほうつかい】が、メラを打ってくるが、その前に集中攻撃で無事に事なきを得た。

「ライバル登場だね!」
 クルリと気前良く持っていた鞭を振り回し、先程の【まほうつかい】と魔法使いのゼトを見比べる。
「わしの方がプリチーじゃわい!」
「いや、それは無い」
 呑気な会話である。ここまで呑気な会話ができるとは…。最初にここに来た時に逃げ帰らざるおえなかった状態と比べると雲泥の差である。

 最上階の一室。三方を壁に囲まれ、最後の正面にはしっかりとした扉がある。モンスターの気配はなく、聖なる力で護られてそうな空間である。そして、部屋の中央には一人の老人がいた。

「やっぱり来たか勇者よ。わしが見たのはお前に鍵を渡す夢じゃった」
 何だと。夢に見るってどういうことだ。こちらの記憶ではあったこともない老人が、一方的に己を知っている。つまりそれは…。
「やっぱ俺、有名人なんだな!」
 散々、勇者なのに勇者らしいことをほぼやって来ていない今、その特別感に酔いしれる。
「だからお前に盗賊の鍵を渡そう! 受け取ってくれるな?」
 己の高揚を華麗にスルーされた。悔しいので拒否する。
「いいえ」
「何でそうなるのー! 勿論受けとるよー」
 一拍も置かずにスパンとアキドに頭を叩かれる。老人はアキドに鍵を手渡している。俺じゃなくても良いのかよ。
「結構ひねくれ者ですか?」
「うるせぇ」
 最近、勇者の価値がわからなくなって来たと思う。
「全く! 素直になってもらわないと困るの」
 アキドに渡されたそれは単純な構造だが多様なものに対応してそうな先端をしている。しかしなーこれって、もはや…。
「ほっほっほ、ではわしは夢の続きを見るとしよう」
 満足そうに目を細める老人に一応お礼を言い、丁度登って来た場所とは別の扉があるので早速使って見る。
鍵穴にすんなり入ったそれは何の抵抗もなくカチャリと開いた。

「わしら、これで一端の盗賊団じゃな」
 鍵の扉を開けてしまえるなんて、やっぱりそうだよな。勇者一行って何だろう。思わず遠い目をする。

「開けられるとこ開けちゃおう! この塔にも怪しい扉あったし!」
 己の懸念をよそにアキドが商人魂? を発揮して塔のお宝を物色する気だろう。商人って何だっけ?
「すごいお宝が眠っていると良いですね〜」
 何も考えてなさそうなピエロが呑気に超ご機嫌のアキドに付いて行く。ここいらに出現する魔物は一人で対応できるものでもないので、慌てて追いかける。

「アリアハンの城に繋がってんのか」
 しっかりとした城壁の廊下に出た。鍵を開けるとそこは城内の牢獄。いろいろ思うところはあれど、あれかこれは隠し通路ってことか。
何かが起きた時に別の通路から脱出できるルートを確保しておくとかそういうのだろ。
「え? この鍵あんたが作ったの?」
 アキドが逞しく牢屋越しに一人の男に話しかけていた。その名はバコタ。どうやらここに捕まった時に先ほど頂上にいた老人に取られたらしい。お城に繋がってる塔だ。あの爺さん只者ではなかったのか。
「わしも只者じゃないぞ」
「…」
 人に心を読んだ上で、コメントに困ること言われても、どう返せと?
「そう私達は愛を求め、華を求める只の遊び人です!」
 いや、かっこいい言い回しだがやっていることは、どう見てもアキドの尻を追いかけているスケベ野郎二人にしか見えない。
「いや、女子を求めるプリチーな魔法使いじゃ」
「修正するところはそこか!」
 思わず、声に出してしまった。
余りに煩い面々に、看守が咳払いをしているのに気付く。盗賊バコタの檻から離れず何か粘っているアキドを引っ張り、牢獄から城内に逃げでた。

 ついでに城内を見学する。結構、盗賊の鍵の話やその製作者であるバコタの話を皆していた。この鍵は思いの外、汎用性があるんだな。
「ッチ、この扉は開かないか」
 明らかに扉の種類が違うその場所でアキドは舌打ちする。周りに頑丈さから、多分そこは宝物庫だ。開けれないのは当たり前だろ。
「アキちゃんはすっかり盗賊に転職しちゃってますねー」
「いつか、鍵を開ける魔法を覚えて楽させてやりたいのう」
 いやいや、どうして開かない赤い扉の前で四苦八苦しているアキドを微笑ましく見れるんだよ。
「諦めろ。魔法の玉っていう情報が入っただけでも儲けもんだろ」
 どうやら、レーベの村の東に強固な壁をも砕く魔法の玉というものがあるらしい。それがないと、このアリアハンの大陸から出られないとか。近年危険となり一度塞がれて、そのままらしい旅の扉への道とやらに最終的には行かないといけないと思う。多分。

「しょうが無い。あたしはあたしの夢があるの。魔法の玉で妥協するかな」
 へー。どんな夢のために勇者についてきたと言うのだろうか。なんかちょっと可愛いと思ってしまった。
「因みにどんな夢ですか?」
「秘密」
 ピエロの質問に、アキドはクルリと振り返り、人差し指を唇に当てて、ウインクする。漸く宝物庫侵入を諦めてくれたか。
「その仕草、言い値で買う」
「じーさん! その発想はやめろ」
 ふんだくられた財布を取り返す。…そんなに隙だらけだったか。余りにも財布取られ過ぎてちょっと落ち込むぞ。
「盗賊勇者団には、まだまだだね!」
 何故か笑いながらアキドにダメ出しされた。

 勇者Lv.7、そもそも盗賊団になる気は無い。

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