Lv.15:返り討ちにあった。
「本当に行くのですか? なんか物騒ですよ!」
武器と防具屋で揃えて準備は万端。
鋼の鎧(2400G)に鉄のオノ(2500G)を己に揃えてほぼ最強装備と言って良いだろう。
アキドには悪いが己のお古である鉄の鎧を渡した。
あとは薬草も持てるだけ持った。
地道な聞き込みも済んだ。
まあ、聞き込みをしたからこその尻込みとも言うかもしれない。
ヤダヤダと、叫ぶピエロを見ていた戦士が笑いながら言った。
「砂漠の北にピラミッドと呼ばれる王家の墓があるそうだ」
ピラミッドはただの建物じゃなくて、王家の墓。
つまりはこの地を作ったフアラオ王が少なくとも眠っているだろう。
「ほらほら、王家の墓ですよ! 罰当たりです!!」
しかも既に色んな輩に荒らされているらしいので既にお宝はない可能性もある。
「そんなの魔法のカギを取らなきゃ始まらないでしょ!」
結局行けるところに星降る腕輪が見つからなかったことでアキドが少しご機嫌斜めである。
否応なしに行くぞとせっつく。
そもそもその魔法のカギも既に我が父オルテガが手に入れていたりしてと思考の片隅で思う。
アキドが怖くて言うに言えない。
「勇者よ。大丈夫じゃて行ってみる価値はあるぞ」
ゼトにポンッと肩を叩かれにやりと笑われる。
(爺さんオレの心を…)とか考えてる場合じゃない。
「ほら、ピエロ諦めていくぞ!」
「ひえぇぇぇぇーー」
ピエロを引きずるのも慣れてきた。
この時の己を罵声りたい。
ピラミッドの本当の恐ろしさをまだ知らなかったんだ。
巨大なレンガブロックで見上げても見えない四角錐を作り上げた過去の偉人は何を思ってコレを作ったのだろうか?
昔は黄金に輝いていたと言われるそれは嘗ての栄光の象徴だった。
今では魔物が闊歩する危険地帯でそこに眠る財宝を巡り熾烈な争いが起こっている。
入り口は整備されており、ようこそと言うように柱で支えられた口がぽっかりと開けている。
扉はない。中はサイドをレンガブロックで覆われており少し狭く、真っ直ぐに伸びている。
まっすぐ行った先で十字路の真ん中を踏み抜いた瞬間、床が崩れて下へと落ちていった。
「いったーい!」
想定外の落とし穴に嵌り、尻を強か打ちつけたアキドが叫ぶ。
床は何やら柔らかいクッションのような柔らかさでダメージはなかったが、そのクッション代わり物の正体を知り背筋が凍る。
「何ですかここは!!」
屍という骸がそこいらに落ちている。
不気味を通り越してもはや絶句し過ぎて声が出ない。
「勇者よ。気をつけるのじゃ。ここは魔法が使えぬぞ」
ゼトが呪文を唱え見せる。
発動するものの形になる前、瞬時に不思議な力で掻き消された。
「マジかよ」
つまり脱出呪文のリレミトが使えないと同意である。
そんな死屍累々のこの場でもモンスターは出現する。
いや、出現するから死屍累々だと言えるかもしれない。
【ミイラおとこ】その名の通り、黒い人型の魔物が包帯でぐるぐるまきの状態で襲ってくる。
巻かれた包帯の隙間から覗く眼光が怪しく蠢く。
柔軟な体をクネらし、人間ではありえない方向に歪む関節を駆使し、柔軟に鞭のように襲いくる。
幸い直ぐに出口を見つけたが、瀕死の時にあそこへ落とされたら終わりである。
気を取り直して二つ目の十字路の中央を避けて直進し、左に曲がる。
そこには少し広くなっており、宝箱が三つ置いてあった。
「なんか怪しくない?」
人が多く出入りできる、入り口にまだ近いこの場所。
アキドは眉を顰める。
「まあ、中身はからっぽかもな」
お気楽に答える。それもその筈、ここに来る前に最初の十字路から左右に伸びていた通路の行き止まり、そこにあった宝箱には案の定何も入っていなかった。
だからこその油断、不用意に開けたのが運の尽き。
襲い来る宝箱型のモンスター【ひとくいばこ】である。
「これはまずい!」
腕を引き抜き、体制を整えようとしたが、長い舌を振り回し、大きく口を開けて襲い来る【ひとくいばこ】に太刀打ちできない。
入り口近く、無駄に多い宝箱。まさに危険性を認知できなかった。
魔法が効かない状況、傷を回復するための薬草も所持していないこの状態で、襲い来る痛恨の一撃。
気が付くと、そこは教会で棺桶の中だった。
「生きている?」
初の全滅。ピラミッドを舐めていた。
己の後ろに並べられている棺桶。己の勇者特典がこの死をなかったことにしてくれている。
「生き返せるか?」
すがるように見つめると、目の前の神父は静かに目を閉じる。
「生き返らすのに230Gかかるがよいか?」
「……お金」
己の財布は装備を新調したことにより、もともとそこまで持っていなかった上に、追い打ちをかけるように所持金は半分なっている。
「なんと、寄付をするにはお金が足りないではありませんか! おぉ、カミよ! 許したまえ! こんなに貧乏な人に無理な寄付を頼んだ私が、悪かったのです!」
大げさに嘆き悲しみ、天を仰ぐ神父はお金がないを何もしてくれないだろう。
「…………畜生」
特典があったとしても、世の中は金でしか解決できないことになっている。
待ってろよ神父!
金を稼ぐにはモンスターを倒すしかないが、今自分は一人だ。
しかし、アリアハン周りのモンスターは大した金額を落とさない。
かといって、ピラミッド周囲は再び全滅するのが目に見えている。
己の魔力ではルーラはそんなに回数を唱えられない。
節約するには実家に泊まるしかない、なので、帰りの魔力を温存しておかなければいけないので、回復を頻回にしなくてよくて、それなりの金額を落としてくれる場所……。
脳をフル回転して効率よく稼ぐ場所はカザーブの村と決める。
所持金がたまり次第、順次蘇生していく。
そう決意をして、ルーラを唱える。
「オレのために犠牲になれ――!!」
鉄のオノを振り回して、襲い掛かる。プライドを捨てた勇者の末路である。
「大変じゃったのう」
最初に確保するは戦力より魔力ということで、稼ぎの時短とルーラ要員であるゼトを最初に蘇生する。
その分自分の魔力を回復にまわせるので、一日で稼げる金額が上がる。
そこからは、アキド、ピエロと順番に蘇生に成功する。
「初めて、やられたけど、結構生々しく残るもんだね」
両手を見てから、顔をたたくアキド。
「わかってはいましたが、最後であることにちょっと複雑です!」
少し丸まりながら不貞腐れるピエロ。
「宝箱が偽物なんて聞いてないよぉー!!」
「難攻不落のピラミッドですよ! 怪しさ満点です!」
無事に何ともなくしゃべる二人に泣きそうになっていたが、のんきな二人のやり取りに首を振ることで引っ込める。
「それよりも、今後について考えた方がよいじゃろうなあ」
その言葉に身を引き締める。
久しぶりに入り浸っている実家。
何も言わず受け入れてくれる母は、全員がそろったときに目を細めてちょっとした御馳走を作ってくれた。
「オレは何時になったら自立できるんだろう」
小さくため息つきながら、自室で作戦会議である。
「魔力が使えん部屋がある時点でわしはお荷物じゃなぁ」
顎の髭をなでながら、ゼトは思案する。
かと言って、薬草係に徹するにはあまりにも心もとない。
一応必殺の毒針はあるものの確率は低い為、難儀ではある。
「ねね、じゃあ。ここに帰ってきてるんだし、明日ルイーダの酒場に行こうよ!」
なんか妙案が浮かぶかもと言うことで今晩は解散になった。
「えー! 勇者様もう旅だったですかー!」
ルイーダの酒場に入ろうと入り口の扉を開けたとき、見知らぬ武闘家の少女が酒場の店主であるルイーダに詰め寄っていた。
「勇者様御一考の中に師匠はいませんでした?」
何かを確認しているようだが、勇者本人である己なので、この討伐メンバーに武闘家の師匠がいないのはわかっている。
彼女には申し訳ないが、通り越し苦労である。
「そんなあ、教えてくれないんですね。うぅ」
ルイーダの声は相変わらず聞こえないが、この町では一応有名人である勇者と言えども、守秘義務は発生するらしい。
「取り込み中のようじゃな。ふと思ったんじゃが、宿屋におる戦士はどうじゃ?」
余計なことを考えているときにゼトにより提案された。
商人に雇われていない時はいつも宿屋で護衛をしている戦士のことだろう。
「ハンソロか、一度、商人のメンバーから抜けたんだな」
魔法が使えないゼトは申し訳ないが薬草係となってしまう。
それよりも、攻撃力もあるし、防御力もある戦士がいてくれる方が心強い。
ダメもとで相談してみよう。
勇者一行は宿屋に足を運ぶことにした。
勇者Lv.15、パーティ交代を目論む。
武器と防具屋で揃えて準備は万端。
鋼の鎧(2400G)に鉄のオノ(2500G)を己に揃えてほぼ最強装備と言って良いだろう。
アキドには悪いが己のお古である鉄の鎧を渡した。
あとは薬草も持てるだけ持った。
地道な聞き込みも済んだ。
まあ、聞き込みをしたからこその尻込みとも言うかもしれない。
ヤダヤダと、叫ぶピエロを見ていた戦士が笑いながら言った。
「砂漠の北にピラミッドと呼ばれる王家の墓があるそうだ」
ピラミッドはただの建物じゃなくて、王家の墓。
つまりはこの地を作ったフアラオ王が少なくとも眠っているだろう。
「ほらほら、王家の墓ですよ! 罰当たりです!!」
しかも既に色んな輩に荒らされているらしいので既にお宝はない可能性もある。
「そんなの魔法のカギを取らなきゃ始まらないでしょ!」
結局行けるところに星降る腕輪が見つからなかったことでアキドが少しご機嫌斜めである。
否応なしに行くぞとせっつく。
そもそもその魔法のカギも既に我が父オルテガが手に入れていたりしてと思考の片隅で思う。
アキドが怖くて言うに言えない。
「勇者よ。大丈夫じゃて行ってみる価値はあるぞ」
ゼトにポンッと肩を叩かれにやりと笑われる。
(爺さんオレの心を…)とか考えてる場合じゃない。
「ほら、ピエロ諦めていくぞ!」
「ひえぇぇぇぇーー」
ピエロを引きずるのも慣れてきた。
この時の己を罵声りたい。
ピラミッドの本当の恐ろしさをまだ知らなかったんだ。
巨大なレンガブロックで見上げても見えない四角錐を作り上げた過去の偉人は何を思ってコレを作ったのだろうか?
昔は黄金に輝いていたと言われるそれは嘗ての栄光の象徴だった。
今では魔物が闊歩する危険地帯でそこに眠る財宝を巡り熾烈な争いが起こっている。
入り口は整備されており、ようこそと言うように柱で支えられた口がぽっかりと開けている。
扉はない。中はサイドをレンガブロックで覆われており少し狭く、真っ直ぐに伸びている。
まっすぐ行った先で十字路の真ん中を踏み抜いた瞬間、床が崩れて下へと落ちていった。
「いったーい!」
想定外の落とし穴に嵌り、尻を強か打ちつけたアキドが叫ぶ。
床は何やら柔らかいクッションのような柔らかさでダメージはなかったが、そのクッション代わり物の正体を知り背筋が凍る。
「何ですかここは!!」
屍という骸がそこいらに落ちている。
不気味を通り越してもはや絶句し過ぎて声が出ない。
「勇者よ。気をつけるのじゃ。ここは魔法が使えぬぞ」
ゼトが呪文を唱え見せる。
発動するものの形になる前、瞬時に不思議な力で掻き消された。
「マジかよ」
つまり脱出呪文のリレミトが使えないと同意である。
そんな死屍累々のこの場でもモンスターは出現する。
いや、出現するから死屍累々だと言えるかもしれない。
【ミイラおとこ】その名の通り、黒い人型の魔物が包帯でぐるぐるまきの状態で襲ってくる。
巻かれた包帯の隙間から覗く眼光が怪しく蠢く。
柔軟な体をクネらし、人間ではありえない方向に歪む関節を駆使し、柔軟に鞭のように襲いくる。
幸い直ぐに出口を見つけたが、瀕死の時にあそこへ落とされたら終わりである。
気を取り直して二つ目の十字路の中央を避けて直進し、左に曲がる。
そこには少し広くなっており、宝箱が三つ置いてあった。
「なんか怪しくない?」
人が多く出入りできる、入り口にまだ近いこの場所。
アキドは眉を顰める。
「まあ、中身はからっぽかもな」
お気楽に答える。それもその筈、ここに来る前に最初の十字路から左右に伸びていた通路の行き止まり、そこにあった宝箱には案の定何も入っていなかった。
だからこその油断、不用意に開けたのが運の尽き。
襲い来る宝箱型のモンスター【ひとくいばこ】である。
「これはまずい!」
腕を引き抜き、体制を整えようとしたが、長い舌を振り回し、大きく口を開けて襲い来る【ひとくいばこ】に太刀打ちできない。
入り口近く、無駄に多い宝箱。まさに危険性を認知できなかった。
魔法が効かない状況、傷を回復するための薬草も所持していないこの状態で、襲い来る痛恨の一撃。
気が付くと、そこは教会で棺桶の中だった。
「生きている?」
初の全滅。ピラミッドを舐めていた。
己の後ろに並べられている棺桶。己の勇者特典がこの死をなかったことにしてくれている。
「生き返せるか?」
すがるように見つめると、目の前の神父は静かに目を閉じる。
「生き返らすのに230Gかかるがよいか?」
「……お金」
己の財布は装備を新調したことにより、もともとそこまで持っていなかった上に、追い打ちをかけるように所持金は半分なっている。
「なんと、寄付をするにはお金が足りないではありませんか! おぉ、カミよ! 許したまえ! こんなに貧乏な人に無理な寄付を頼んだ私が、悪かったのです!」
大げさに嘆き悲しみ、天を仰ぐ神父はお金がないを何もしてくれないだろう。
「…………畜生」
特典があったとしても、世の中は金でしか解決できないことになっている。
待ってろよ神父!
金を稼ぐにはモンスターを倒すしかないが、今自分は一人だ。
しかし、アリアハン周りのモンスターは大した金額を落とさない。
かといって、ピラミッド周囲は再び全滅するのが目に見えている。
己の魔力ではルーラはそんなに回数を唱えられない。
節約するには実家に泊まるしかない、なので、帰りの魔力を温存しておかなければいけないので、回復を頻回にしなくてよくて、それなりの金額を落としてくれる場所……。
脳をフル回転して効率よく稼ぐ場所はカザーブの村と決める。
所持金がたまり次第、順次蘇生していく。
そう決意をして、ルーラを唱える。
「オレのために犠牲になれ――!!」
鉄のオノを振り回して、襲い掛かる。プライドを捨てた勇者の末路である。
「大変じゃったのう」
最初に確保するは戦力より魔力ということで、稼ぎの時短とルーラ要員であるゼトを最初に蘇生する。
その分自分の魔力を回復にまわせるので、一日で稼げる金額が上がる。
そこからは、アキド、ピエロと順番に蘇生に成功する。
「初めて、やられたけど、結構生々しく残るもんだね」
両手を見てから、顔をたたくアキド。
「わかってはいましたが、最後であることにちょっと複雑です!」
少し丸まりながら不貞腐れるピエロ。
「宝箱が偽物なんて聞いてないよぉー!!」
「難攻不落のピラミッドですよ! 怪しさ満点です!」
無事に何ともなくしゃべる二人に泣きそうになっていたが、のんきな二人のやり取りに首を振ることで引っ込める。
「それよりも、今後について考えた方がよいじゃろうなあ」
その言葉に身を引き締める。
久しぶりに入り浸っている実家。
何も言わず受け入れてくれる母は、全員がそろったときに目を細めてちょっとした御馳走を作ってくれた。
「オレは何時になったら自立できるんだろう」
小さくため息つきながら、自室で作戦会議である。
「魔力が使えん部屋がある時点でわしはお荷物じゃなぁ」
顎の髭をなでながら、ゼトは思案する。
かと言って、薬草係に徹するにはあまりにも心もとない。
一応必殺の毒針はあるものの確率は低い為、難儀ではある。
「ねね、じゃあ。ここに帰ってきてるんだし、明日ルイーダの酒場に行こうよ!」
なんか妙案が浮かぶかもと言うことで今晩は解散になった。
「えー! 勇者様もう旅だったですかー!」
ルイーダの酒場に入ろうと入り口の扉を開けたとき、見知らぬ武闘家の少女が酒場の店主であるルイーダに詰め寄っていた。
「勇者様御一考の中に師匠はいませんでした?」
何かを確認しているようだが、勇者本人である己なので、この討伐メンバーに武闘家の師匠がいないのはわかっている。
彼女には申し訳ないが、通り越し苦労である。
「そんなあ、教えてくれないんですね。うぅ」
ルイーダの声は相変わらず聞こえないが、この町では一応有名人である勇者と言えども、守秘義務は発生するらしい。
「取り込み中のようじゃな。ふと思ったんじゃが、宿屋におる戦士はどうじゃ?」
余計なことを考えているときにゼトにより提案された。
商人に雇われていない時はいつも宿屋で護衛をしている戦士のことだろう。
「ハンソロか、一度、商人のメンバーから抜けたんだな」
魔法が使えないゼトは申し訳ないが薬草係となってしまう。
それよりも、攻撃力もあるし、防御力もある戦士がいてくれる方が心強い。
ダメもとで相談してみよう。
勇者一行は宿屋に足を運ぶことにした。
勇者Lv.15、パーティ交代を目論む。
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