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竜の眠る地

DQ主達の記録

Lv.9:盗まれたものを捜索した。



 誘いの祠の地下は思いの外、老朽化が進んでおり、床が抜け朽ちていた。お陰で通れなくなっているところも多く一種の迷路となっている。更に日も当たらないそこは、湖の水を受けて壁が脆くなり破壊され、単純だった道を更に複雑化し魔物の坩堝と化していた。
何とかそれらをクリアした一行は、扉で厳重に鍵を掛けられていた旅の扉の先にいる。

「城か…」
 何とも言えない気持ちにさせられた旅の扉の先は、古くから祀られているような祠であった。そこから出ると草木が生い茂り、屋根は崩れ、その存在を忘れ去らて長い月日が過ぎ去っていた。この場所に獣道すらなかった。
そこを掻き分け、漸く出たその先に巨大なお城が鎮座していた。出身地であるアリアハンのお城とどちらが大きいだろう、見ていても良くわからない。同じぐらいの大きさと結論付ける。

 城の前には城下町が広がっており、門の前に二人の衛兵が警備していた。お上りさんの如く戸惑いながらペコっと頭を下げるとビシッと敬礼して二人同時に叫ぶ。
「ようこそ、ロマリアのお城に!」
 ビクッとしたものの、ここがロマリアと言う場所だと言うことは分かった。そして何とこの国は勇者を快く出迎えてくれていると言うことだ。まだ何も手がかりを得てないので魔王討伐の期待にはちょいと申し訳なく思うけれど。やはりこの優越感は堪らない!

「ねぇ、勇者君。思うんだけどさー。君って実はあんまり知られてない?」
 異国の地に来て浮き足立っている己の後ろをついて回りながら、アギトはズバッと言う。
「勇者の期待は大きいが、誰もお主を勇者とは思っとらんようじゃな」
 やっぱり? 薄々そうじゃないかなーとは思ってたんだよ。己に対してはアリアハン出身だと一発でバレたが、勇者であると顔を見て言われていないのは気付いていた。畜生、ちやほやしてくれるのはアリアハンの大陸だけですか、そうですか!!
……ん? 冷静に考えればアリアハンでもそんなに優遇されていた気がしない。盗賊の鍵をくれた予知夢の人と魔法の玉の人だけじゃん。絶望で膝を突きそうになったのだが、城内へ入る手前自制した。
「さあ、王様がお待ちかねですぞ」
 流石に城下町とは違い場内では己が勇者であることを知っていてくれる人がいる。腐っても嘗て全世界を手中に収めた列強アリアハンと渡り歩いた国である。今でも世界の危機に勇者が旅だったことは知ってもらえていたようだ。問題なく謁見の間に通された。

「…は?」
 王の前だと言うのに間抜けな声が出てしまった。しかし決定事項は覆ることはない。

「よくぞ来た! 勇者オルテガの噂は聞き及んでおるぞよ」
 ロマリア王はまず始めに歓迎してくれた。親父の有名さは本当に頭が下がるぜ。親父がいたから己は追い出されることなく情報が聞けて、何不自由なく旅ができるのだ。
「父を超えるのが我が目標です」
「では、頼みがある! カンダタという者がこの城から金の冠を奪って逃げたのじゃ。それを取り戻せたなら、そなたを勇者と認めよう!」
 ……やっぱ思い出してもよく分かんねー。どこがどうなったら、己が犯人探し…いや犯人は分かっているからこの場合は居場所探しか? 兎に角それをしなければならないのだろう。
「恩を売っといた方がええぞ」
 ポカンとしてしまった己にゼトが耳打ちする。まあ引き受けることになりそうだからやるけど。

「金の冠かー。王様のものだから凄く高級そうだよね」
 アキドは盗賊…いや商人の顔をしている。
「居場所を突き止めて奪還ですね」
 ピエロも現場検証やら事情聴取しなければといろいろブツブツ言い出す。
と言うか、何で皆そんなにやる気なの?

 こうして盗賊勇者団から探偵勇者団に名前を変更し、金の冠をカンダタから奪還することとなった。


証言其の一。北東の塔に住む隠居した前王。
「わしの息子は遊び好きでな、王様になってもその癖がぬけん。困ったやつじゃ」

証言其の二。北西の塔に幽閉されている囚人。
「カンダタはシャンパーニの塔に子分を集めて住んでるって言うぜ。今もいるのかなあ……」

証言其の三。謁見の間にいた王に招待された吟遊詩人。
「カザーブの村の遥か西。シャンパーニの塔が聳えるという」

証言其の四。その辺にいた町娘。
「え? この城の遥か北にカザーブの村がありますわ」

「これで出揃ったね!」
 一通り聞き込みを終了させた一行は宿屋で集まる。
「必要ない情報を全て排除した結果ご覧の通りです。そこから推理すると…」
 顎に手を当てドヤ顏でピエロが何か言おうとする。
「つか、もう答え出てんじゃん! 重要なのは元仲間か同じ裏世界の住人だったかで知っていた囚人の情報だけじゃねーか! 一つ全く関係ないのも混じってるし!」
 何だこの茶番劇は…。他にもまあ色々聞いたが今回必要なのは確かに最初以外の上記のことだ。
「ほっほっほ、ちと簡単な推理じゃったな」
 いや、だから推理とかそう言う次元じゃないって。盗人の正体を知っているのだから、そこから情報掴めるのは早かった。
「明日はカザーブ村に行って、準備整えてから乗り込むぞ!」
「はーい!」
 と言うわけで本日は解散となった。

 次の日、一行は北に向かいひたすら歩くこととなる。ロマリアの店で鉄の槍(750G)を一本だけ購入。アキドに渡し、鎖鎌のお下がりを貰う。
このロマリアの大陸のモンスターはまた強い。
【アニマルゾンビ】狼が腐ったような外観で零れ落ちている目玉が気持ち悪い。攻撃は通りやすいも反撃が痛い。そこまで集団で出てこないのが救いである。あと、ボミオスと言う素早さを下げる呪文を放って来るが、ちょっと動きにくくなる程度で今のところさほど困らない。
【おばけありくい】灰色の大型の鼠に近い何か。単体では攻撃防御共々そこまで強くないが、集団ないしは【アルミラージ】と一緒に出て来るのが厄介である。
【アルミラージ】紫の毛を持つ一角獣ぱっと見は【いっかくうさぎ】のようだが、角と脚力は桁違い。そして何より困るのが睡眠魔法ラリホーだ。強制的に眠らされるのである。痛みで目が覚めたら死にそうでしたと言うのはかんべん願いたい。こいつ自身そこまで強くないのと、眠らせて逃げると言う臆病さがあり、何とか助かっていると言う感じだ。

 と言うわけで基本アキドの攻撃を中心に三匹以上でゼトもギラの魔法を使うと言うスタンスを取り攻略して行く。
険しい山道で歩む速度が頗る遅いってことを除けば、概ね順調である。山道を歩くので疲労が募り、皆無口となっているので特筆するような会話もない。

「うわー。すっごい田舎」
 アキドの第一声はなんとも言えない声色であった。それもそのはず山と山と山に囲まれたこじんまりとした谷間にある村、カザーブ。山奥の休憩スペースと言っても過言ではない程の小さな村であった。しかし、旅人を迎える最低限は揃っており、思いの外快適に過ごせた。
いろんな逸話も聞けて面白い。熊を素手で倒せる武闘家の話や、魔法使いが毒針で魔物の急所を仕留める話とか、エルフの怒りに触れ人が眠っている町があるとか興味が尽きない。
うろうろしていたらすっかり夜になってしまったので宿屋で一泊することになった。
しかし、アキドとピエロは夜にどこへ行っていたんだろうか。何か嬉しそうに宿屋に戻ってきてたのが少し気になった。

 翌朝、身支度を済ませる為に武器と防具屋による。
「ピエロお前なんで装備できない!」
 山道でモンスターが襲ってくる率が高かったからか、魔物の落とすお金が増えたからか、完全に余裕ができたわけではないが、ちょいちょい買い物ができるようになった。しかしだ、買っても装備できないとはこれいかに、思わず先ほど購入した鋼の剣(1500G)でピエロを攻撃する。真剣白刃取り状態のピエロは青筋を立てて抗議する。
「もともと私は戦闘に向いてないんですって!」
「何が向いているんだよ!」
 戦士じゃないアキドでも十分戦っているんだぞ。睨めば目を逸らし、ニヘラと笑う。
「………遊び? 痛い痛い痛い。無理やり力任せに押し込まないでください!」
 自己の全体重をかけると、腕が死ぬと叫ぶピエロ。
「ふぉふぉふぉ、人には得意不得意があるんじゃてな」
 愉快愉快と笑うはここに売っている武器も防具も装備できないゼト。いや、彼は魔法使いだからな。ギラ最高!
「や、槍は装備できます!」
 必死に言い訳をするピエロ。仕方ないと力を弱め、態勢を元に戻す。
「ならアキドの槍とこの鋼の剣をトレード…ってアキドどこ行った」
 大きな溜息をつくピエロを横目に武器と防具やから少し離れた…あそこは道具屋。なーんか嫌な予感、レーベの村でも同じような事があった気がする。
「アキド?」
 恐る恐る名前を呼ぶとジャーンと嬉しそうに鉄の前掛けを装備したアキドがにこやかにポーズをとった。うん可愛いぞ!
じゃねー。それ幾らしたの。え? 700G? あれ、思ったより安い。なら良いか。

「女性に贔屓じゃな」
「私には鋼の剣の攻撃と言う仕打ちでしたのに」
 ジト目で見られている。何も反論できない。
「もー拗ねないでよ。ほら、ゼト爺ちゃんにはこの毒針あげるからさ」
 そ、それは伝説の毒針。急所を突くことで力の弱い魔法使いでも捌けると言う逸話の!
お店で売ってなかったのにどこで手に入れたのだろう。
「成る程、では有難く使わせてもらうとするかのう」
 ゼトは全て分かったのか目を細めて受け取る。
「あー、昨日の夜、道具屋でくすねた奴ですね」
「ちょ、盗賊の鍵を有効活用しただけだよ!」
 だって、あの人さ交渉してもくれなさそうだったんだもんと視線を逸らす。
「…………目を瞑ろう」
 毒針は手放したくない。うん。魔王を倒す為に必要な物だ。勇者の為に犠牲になってくれ道具屋さん。

「毒されて来たのう」
 ゼトが相変わらず愉快そうに言う。
「……否定できない」
 毒針を手に持ち丁度良いと振るう姿は凄く様になっていた。

 勇者Lv.9、盗賊勇者団の復帰である。

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