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竜の眠る地

DQ主達の記録

Lv.10:ギラを覚えた。



 ギラか。うん己の魔力じゃ役に立たない。魔力があれば使うんだがなー。ゼトがぶっ放すギラを見ていると爽快だもんな。

 気前よく塔を探しに出かけたのはいいが、攻撃は最大の防御を信念にしていると、ついつい疎かになりがちな防具強化。ここカザーブの村から西、シャンパーニの塔へは行けたのだが、敵の猛攻に傷だらけになってしまい塔捜索もままならない。
一旦ルーラで引き返して来たわけだ。
「勇者君ほら、鋼の剣と鉄の鎧を装備して! 君は前衛なんだから硬くならないとね!」
 アキドが購入した物を渡す。

 確かに【キラービー】(蜂のような羽、蠍のような麻痺を呼び起こす尻尾、緑の甲殻に覆われているモンスター)の攻撃ダメージは計り知れない回避しようにも俊敏に動き錯乱させるので、上手くいかない。
また、芋虫が巨大化し回転攻撃などの俊敏性を手に入れた【キャタピラー】や毒攻撃を仕掛けてくる青い毒蛙【ポイズントード】も侮れない。でも中でも【ぐんたいガニ】の大きなハサミを振り下ろす攻撃だろう。鋭さを持ったハサミは人間の皮膚なんぞペラペラの紙と同等のと言うように引き裂いていく。しかも、蟹なだけあって甲羅が硬いのなんの。お腹に剣を突き刺して何とか倒せる。懐に潜り込むにはこちらの傷を受ける覚悟がいるので大変である。

 とまぁ、ここまで来ると防具の有難さが分かるというもの。鉄の鎧(1100G)に身を包む前と後での傷を受ける頻度と疲労度の差が歴然。ホイミを使う頻度も減り、あっという間にシャンパーニの塔についた。
アキドがあの時、鉄の前掛けを買っていたのは間違いなかったってことか。

「今回は乗り込むぞ」
「いよいよ。お宝強奪だね!」
 アキドさん違うよ。金の冠取り返すだけだよ。この人達に何を言っても無駄だと言う認識になりつつある現在。もうツッコミを放棄している。
「何さー。最近連れなくない?」
「カンダタがいるかもしれない塔に登るのに余計な体力使いたくない」
 己の言葉にふーんと言う相槌のみ返すアキド。今の並びは勇者の自分、アキド、ピエロ、ゼトである為、必然的にアキドとの会話が多くなる。後方のエロ男たちはもう嫌だ。
何かあれば、アキドがお金を請求しだして、いつの間にピエロに擦った、共有の財布からゼトが支払おうとしたのでストップかける。ここまでが、既にパターン化されてきた気がする。
さっきも、疲れたから休憩と言い出して、先行くと言えば『アキドがぱふぱふしてくれればもうちょい頑張れる』とか言い出したのが始まりだ。大体ぱふぱふってなんだよ!

 戦闘ではそれなりに頑張ってくれるので妥協しよう。そう、槍しか装備できないピエロは兎も角、毒針を装備したゼトが水を得た魚のごとく活躍を見せるようになった。
魔法でも随分助かっているが、節約の為に持たせた毒針の威力が想定より凄い。塔に住みついている【こうもりおとこ】(吸血鬼にような人形の見た目で小さな蝙蝠の羽を懸命に動かし、空から体当たりしてくる)の攻撃が結構痛いので複数出てくるときはギラで対応するのだが、時折、呪文を封じる魔法マホトーンを使ってくるので、途中から毒針で攻撃するのに切り替えたのだが…。
「せい!」
 必中では無いが、襲いくる【こうもりおとこ】へ、ゼトが瞬時に間合いを取り、首筋に突き立てる毒針。相手はもがく間も無く死に至る。暗殺できそうな手際である。
「じーさん何者?」
「ほっほっほ、まだまだ若いもんには負けんぞ」
 器用に毒針を振り回すそれはもう、普通の人なら恐ろしくてできない程の針捌きである。
マジ何者よ? 魔法使いとしてはまだまだ新米とか言ってたのに、いやまぁ、仲間の過去なんて誰も知らないんだけどな。
「長いこと生きていると色々あるんじゃよ」
「色々ありますよねー。私の鼻も色々バリエーション付けてみますかね?」
 ゼトの活躍を尻目にピエロの対抗心は、何時も戦闘と関係ない所に力を入れる。鼻の色を変えて何になるって言うんだ。
「何色にするんじゃ?」
「ピンクなんてどうでしょう?」
「今すぐ紫色にしてやろう」
 階数を重ねると現れた毒々しい色に身を包んだキャタピラー【どくイモムシ】このモンスターが吐く毒の息は人の呼吸を妨げる紫色の霧。こいつの紫色の体液にも毒素が含まれているので、鋼の剣で切った勢いにまま、ピエロに投げ渡す。
「うわぁ!? 毒エキス反対! どくむしはやめてく…ぎゃー!」
 ゼトがギラで焼き、毒消し草を処方してあげている。本音はアキドにやってほしいだろうが、そんなもの知らん。
「お疲れアキド」
「ふふふ、勇者君! 順調だね。お宝は近いよ!」
「そうか」
 相変わらず戦闘の要であるアキドは階層が上がれば上がる程、そこいらに居る男にカンダタ情報を聞けば聞く程、いろんな宝箱を空ければ空ける程、期待値が上昇するようで、キラキラと目を輝かせている。
かの有名な『とうぞくのはな』と言うお宝感知能力に目覚めても己は疑うことなく受け入れられそうな気がする。いや、そんなことはあり得ないのだが…。

 さて、塔の頂上付近、一際頑丈な扉で守られている建物がある。盗賊の鍵を所持している我らの障害にはなり得ないが、いかにも怪しい場所である。

「上から何か聞こえますね」
 扉で遮られていたからか、ここにはモンスターは居らず、広い部屋の割りに何もおかれていない。奥には階段があり、近寄ると何やら声が聞こえる。
「静かに」
 小声のピエロにも静寂を促し、皆が聞き耳をたてる。
「こいつが例の金の冠か、高値で売れそうだぜ」
「あそこはお頭にかかれば一瞬だったな。何でも娯楽以外に興味ないとかさ」
 ここまで聞けばまごう事なき犯人確定である。あとは一気に乗り込むまでだ。
これで勇者と認めてもらえる何ぞ楽勝だぜ。
「行くぜ!」
 調子よく階段を駆け上がる。
「ちょっと!?」
 アキド達の慌てる声が聞こえたからがしたが、気分が高まった己に死角はない!
「やい、金の冠を返せ!」
 盗賊団を追い詰める。

「よくここまで来れたな。誉めてやるぜ!」
 逃げる子分を追い詰めると、現れた一番恰幅が良く筋骨隆々の緑の覆面マントを着た半裸の男が、胸を張って現れた。
「お前がカンダタか?」
 確認を取る。確かに人より体格がよく屈強そうだが、子分の人達の方が金色の鎧を見にまとっていて、頑丈そうである。見せたいのか?
「そうだ。だが俺様を捕まえることは誰にもできん! さらばだ」
 詰め寄った瞬間である。パカッと軽快な音を立てて床に穴が空く。そりゃもう一瞬で、重力に逆らう事ができる訳がない為、真っ逆さまに落ちて行く。
「うわぁぁぁぁーーー!!」
 叫びながらも、カンダタの高笑いを耳にする。

「盗賊なんだから罠があるに決まってるでしょ!」
 何もせずに突っ込んだ事に大目玉をアキドからもらいながら、元来た場所に戻る。幸い穴は深くなく、直ぐ一階下に繋がっていた。恐らく人を陥れる訳ではなく、逃亡用でもあるからこそ助かったのだろうとゼト談。
ゼトの推理通りそこはもぬけの殻となっている。先程まで閉まっていた宝箱がご丁寧に空いていたことから、金の冠も持ち去られているだろう。

「逃すかぁ!」
 アキドか己か、ほぼ同時に言ったのか、意思を固く二人は正面の空いている唯一の出窓からから飛び降りて、周囲を見渡す。
カンダタは直ぐに見つかった。長い縄を用意していることから、壁伝いに逃亡を図るつもりであろう。
「見つけたぞ!!」
 勇者を舐めるな。とばかりに詰め寄る。カンダタとその子分数名。負ける気はしない。
「しつこい奴らめ! やっつけてやる!」
 追い詰めた。逃げれない事を知ったカンダタは斧を振りかぶり、戦闘態勢。そうこなくっちゃなと、剣を構える。
遅れてやって来たピエロとゼトが同じく戦闘態勢に入る。これで人数は同じである。
完全に怒りをあらわにしたカンダタが最初のターゲットを己にして斧を振り回し、襲いかかってくる。
そのカンダタの攻撃を避け…れないだとぉ!?

「しまっ…!!」

 斧が直撃する。あの筋肉量から繰り出されるのは痛恨の一撃。
「ちょ!? 勇者君!?」
「ス、スクルトじゃ!」
 皆の叫びを聴きながら己の体は光に包まれた。

 勇者Lv.10、そして、後悔する。

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