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竜の眠る地

DQ主達の記録

世界の理



「じゃぁ、自由に空を飛べるわけじゃないの?」
 ナインの背にある翼を見ながら確認する。
もし飛べるのなら鷹の目より便利かもしれない。
「はい。一度落ちたときに消えたままでしたから、今では逆に違和感があります」
 パタパタと動かしながらにこやかに答える。ここへ滑空するときに翼を使ったのだが、上手く扱えずレプリカを装備している気分だった。
「翼ですか。僕もとある特殊な力で飛んだことありますが…」
 エイトは自己の世界でも特殊に入る方法なため、どう説明しようかと思案する。
しかし、もう実際には使えないので意味のない説明かと言葉を切る。
「空を飛ぶ方法かー。ボクは不思議な飛空石だったなー」
 今はもう返してしまったので手元にはない。長距離移動には便利だったなと思い出す。
すっかり過去の出来事になりつつあると、摩訶不思議な現実とのギャップを思い起こす。
「空飛ぶ乗り物ですか? ぼくは方舟に乗ってますね。残念ながらここでは笛の音が届かないみたいでダメでした」
「上手くいかないもんだねー」
 舟が空を飛ぶのかとハテナマークが出たが、石の塊が空を飛ぶのだ。
何でもあるだろうと思考を切り替える。
 それから、どれぐらいの時が経ったか、この世界のモンスターにも慣れて来た。
僅かに見えた森に囲まれた祠を目指す。


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「おかしい…時間の経過がない」
 森の中腹で木々の隙間から見える日の光を浴びながらアルスは唸る。
かなりの距離を歩いたにもかかわらず日の光が差す方角が変わらないのである。

「ナイン君、これではありませんか?」
 空を見上げて首を傾げているアルスの横でエイトが木々より少し高い屋根がある建物を見つけ、呼びかける。
「はい、おそらくこれですね!」
 ナインの言葉に後押しされるが如く、促され、一行はその祠のような石でできた建物の内部へと足を踏み入れた。

 そこは天井まで吹き抜けになっており、日の光が天井のガラスを透過し、神秘的に中央にあるものを照らしている。
「砂時計?」
 誰とも無しに呟く。
そう中央に巨大な砂時計が置かれていた。
 砂時計は機能しており、サラサラと上から下にキラキラと輝く砂を落としている。
ポカンとしていると砂時計の砂が落ち切り、カタカタとカラクリが動き、独りでにひっくり返る。
ズンっと重力が掛かり時が吸い取られ…。
「…な、何!?」
 丁度砂時計が動き出した時、三人が立っていた部分が光だし、外の変化の影響が起きないよう遮断する。

『ここは時の渦。この巨大な砂時計は時を操るもの。今この世界の時は止まっています。魔物は何度も蘇り、世界は繰り返されています』
 不意に聞こえた声。ズシンと大きな音を立てて設置された砂時計を見上げる。

『あなた方は選ばれし者です。良く似た世界の統率者よ。願いを聞いてくれますか?』
「あなたは何者ですか?」
 ナインは語りかける者へ質問する。

『私はルビス。この世界を作りし物』

 ルビスの言葉に目を見開くアルスとエイト。名は知らないが、ここが自分たちの世界と異なる場所であることを再認識する。
即ち別の秩序があると言うことになる。
「ぼくたちは何をすれば良いのですか?」
 ナインだけは冷静にルビスの言葉を待つ。
『主に狂った軸の修正。そして体感して下さい。それが願いへと繋がります』
 これは歴史の修正者への褒美でもあります。

 淡々と紡がれる言葉。
その言葉の意味が何一つとして理解できない。
ただ、またとんでもないことに巻き込まれたと言うことを理解する。

『お行きなさい。そこの扉が選ばれし者達の場所へと導きます』
 スッと光で示された砂時計の横にある扉、促されるままに移動する。
扉の先は淡い光を螺旋状に放つ『旅の扉』
この形状のものは誰も見た事は無かったが、何処かへ飛ばされるのだろうと言う事は理解できた。


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 同じく渦を巻いている旅の扉付近に着地した三人は既に日が暮れていることに驚く。
先ほどの場所はやはり時が動いていなかったのだろう。
暗闇に目が慣れてくると、近くに大きな建物があることに気づく。
その入り口に人が集まっているのも見て取れる。

「夜だし、あまり大きな音を立てないほうがいいよ」
「いいじゃん! ここに住んでそうな人をようやく見つけたんだからさ!」
「お前は少しは疑えっての!」
 どうなら揉めているようである。そうこうしているうちに、玄関の扉が開かれる。
「ようこそ、異世界住人が集まる宿舎へ」
 その言葉でルビスの言っていた『選ばれし者達がいる場所』という意味を理解する。

「わー! 結構な人ですよ」
 ナインはテンション高く玄関口にいる人たちへ話しかける。
「『人』じゃないかもよ」
 ナインも天使だったんだし、ありえると大人数に苦笑交えながらアルスは答える。
「ですが、例の者達のようですね」
 これから何が始まるのか不安でしかないと、ため息つきつつエイトも合流する。

「何人いるんだよ!!」
 急に増えた人数に思わず出迎えた一人——ロトは叫ぶ。
「九人だな!」
 瞬時に数えて元気よく返事した青いツンツンヘアーのレックは呑気に発言する。
その反応にロトはそう言う意味じゃないと言おうとしたが、第三者の言葉に遮られた。

『皆様には、是非とも異なる世界を旅してほしいのです』

 ゆっくりと言われた言葉にここにいるメンバー全員の思考が停止する。



【世界の理】

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